社会福祉法人 富士育英福祉会 岩松保育園

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園長のひとりごと#6 成長の機会

2023年08月01日
 少し前の事、2階の幼児クラスを通りかかった時、ロッカーの前で一人の子がシクシクと泣いていました。状況から察するに、登園したのはいいけれど大好きなお母さんと離れた悲しさを抑えきれずに泣いているようでした。(そうだよなぁ、今日は月曜日だしなぁ。憂鬱にもなるよなぁ・・・)と、その子の心情を察して声を掛けようとしました。しかし、その子に近づこうとした時、お部屋の窓からさりげなく様子を伺う担任の姿が目に入りました。(もしかして、これは敢えて声を掛けずに見守っているのかな・・・?)そう思った私は、その場を素通りして近くから見守ることにしました。(本当に大丈夫かな?)と最初は少し心配でしたが、そんな心配も不要だったようで、程なくしてその子は自分で涙を止め、一人でお部屋に入っていきました。私が見守っていた時間は2、3分程でしたが、その短い時間の中でも、その子は悲しい気持ちを抑えようと葛藤し、今やるべきことを自分で考えて行動に移したのです。思いがけず、一人の子が自分で自分に折り合いをつける貴重な瞬間を見ることが出来ました。登園して支度をし、いつもの生活の場に立つ。それだけでも、その日のコンディションによって難しいことがあります。大人の私でも、たまにしんどい時があるので、子どもは尚更だと思います。しかし、自分の力だけで気持ちの整理をつけたその子は、この経験でまた一つ自信をつけたのではないでしょうか。 
 危ないところでした。もしも私が直ぐに声を掛け、その子をお部屋まで連れて行っていたら、その子が自分で考える機会、葛藤し自分でネガティブな感情を抑えるという、成功体験の場を奪ってしまう所でした。もちろん、暫く見守った上で今日は無理そうかな?と判断すれば、その時は声を掛けて一緒にお部屋へ入って行ったと思いますが、私がしなくても、きっと担任が同じことをしてくれたと思います。 
 子どもとは本当に可愛く、この子たちの為に出来ることは全てしてあげたいと自然に思わせてくれる特別な存在です。私でさえ園の子たちに対してそう思うのですから、保護者の皆様が自身のお子さんへ抱く愛情は計り知れないのだろうと思います。しかし、大切だからこそ単に愛でる対象としてではなく、ひとつの人格として尊重し、今後何十年と続いていく人生を、その子が自分の力で生きていけるよう援助していくことが大切なのだと思います。 

  園長 後藤大周 
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