社会福祉法人 富士育英福祉会 岩松保育園

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園長のひとりごと#4 天才キッズのその後

2023年06月01日

 以前、何気なくテレビを見ていると、ステージの上で小さな女の子が1人歌を歌っていました。それを観覧していた出演者達は口々に「すごーい‼︎」「かわいい‼︎」と賛辞を送っていました。私の中では、テレビに出ている子どもと言えば数年前の鈴木福くんや寺田心くんのような小学生のイメージだったのですが、今回テレビで歌唱していた子はそれよりも遥かに幼い。聞けば年齢は3歳らしい。3歳の女の子をカメラの前に出すことの良悪については一旦置いておくとして、日本には昔から「神童」を囃し立てる風潮があると思います。「子どもなのに大人みたいなことができる子」を大人が歓迎し、もて囃す。近年は少子化により習い事の需要が高まっているそうですが、スポーツ、ダンス、英会話、受験勉強などの習い事も、始めるのが早ければ早いほど「すごい」という空気も感じます。
 問題なのは、そのような「神童」たち(最近は天才キッズと言うらしい)が、周囲の大人たちにもて囃され、消費され、使い捨てられているという事実です。元陸上選手の為末大さんはこのような問題について自身のTwitterで「日本は若年層レベルの全国大会が多くて、かつ、とても加熱しています。良い面もありますが、結果的に伸び悩むケースをたくさん見てきました」「五輪に行くような選手は背が高く、晩成型が多いです。将来活躍しそうな人が中学ではまだ勝てない、という実情があります。一方で、中学チャンピオンは早熟型が多い」「早く育てようと思うと、『いいからやれ』が一番きくんです。(中略)でも、長く、高く育てようと思うと、それが弊害になり、自分でどうしたらよいのかを考えられない選手になってしまう」と言及しています。これはスポーツ界だけの話ではなく、乳幼児の子育てについても同じことが言えるのではないかと私は思います。乳幼児の段階で目に見える結果を優先し、大人にとって都合の良い「物分かりの良い子ども」を作ろうと思えば、為末大さんの言う『いいからやれ』と言う指導法にならざるを得ません。ただ、そこに本人の意志は無く、その後に残るものも少ないです。
 目先の結果は出なくても、自分で考えることを尊重し、自分の意志で行動してみようと思う言葉掛け、環境を整えることこそ大人のすべきことではないでしょうか。子どもが出来うる範囲で自己選択、自己決定を主体的に行う経験をし、その中で成功体験を積むことが自己有能感を育てていきます。そういった過程を経て出た結果なら、失敗でも成功でもきっと本人は納得をするでしょうし、ポジティブな気持ちで次への挑戦の糧にしていくと思います。
 子どもは、目の前の結果次第で生活、人生が決まる大人とは違います。大人になれば、嫌でも結果と向き合わなければならない時が必ず来ます。そんな時に、ポジティブに挑戦していける心、ダメでも気持ちを切り替えて前を向ける心、自分で創意工夫をして壁と向き合う力こそ、乳幼児期に育てていかなければいけない力です。そのためにも、たくさんの失敗、成功、楽しさを子どもたちには経験させてあげたいなと思っています。

                                    園長 後藤大周

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