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園長のひとりごと#28 曖昧性耐性の育て方
2018年10月10日
私達の生活の中で白か黒かがはっきりしているという状況は、実はそれほど多くはありません。人間関係を見ても、A君とは仲がいいから敬語は使わないけれど、B君とは少し距離があるので敬語を使う。そうやって私たちは、言葉遣いや姿勢・態度などで心理的距離を取りながら人間関係を作っていきます。そして、そのような曖昧な状況を維持するためにはスキルやエネルギーが必要なのですが、そうした気を遣い過ぎた結果、疲れ果てた子どもたちが取る行動は2つです。
一つは、これ以上下がれないという所まで他者と距離を取ること。すなわちひきこもりです。二つ目は、これ以上近づけない所まで誰かと一体化し依存すること。引きこもりと依存は、一つの安定状況なのです。
どちらかの行動をとれば、曖昧性に対してエネルギーを使わないで済みますから楽とも言えますが、長い目で見るとこれは辛い生き方となります。
現代社会はデジタル化が進み、オンかオフか?我慢出来るか出来ないか?の二者択一の世界になりつつあります。「そこまで好きな友達ではないけれど、仲間だから付き合う。好きなところもあるけれど嫌いなところもある」といった曖昧な状況に耐えうる子どもが少なくなってきている気がします。ではどうやって曖昧性耐性を育てるのかと言えば、それは曖昧性体験を積み重ねていくことです。
例えば、子どもと一緒にテレビを見ている時に「こんなくだらない番組を見てはダメ」と親が全否定するよりは「ここは面白いけど、こういう所は好きじゃないな」という風に部分肯定、部分否定をしてあげることで子どもは2者択一ではなく「人には様々な考え方がある」という事を知り、その中で自分はどうなのかという事を振り返るのです。
園長 後藤弘明