園長のひとりごと#36 言葉の増やし方

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 乳幼児検診で言葉の遅れを指摘された保護者が、その日からアイウエオ帳、単語帳を使って子どもに言葉を覚えさせようと頑張る話はよく聞きます。しかしこの話、親が頑張った割にはあまり効果が得られずまた悩む。という所までセットでよく聞く話です。
 言葉や話始めについては、保護者の方からのご相談も多いので、今回は子どもの言葉の獲得についてお話したいと思います。まず始めに、子どもに言葉を練習させたり覚えさせたりするようなことはあまりオススメしません。感情が動いてこそ、人は言葉を発していきます。楽しかったり、嬉しかったり、驚いたり・・・何かに心が動いた時、その思いを誰かに伝えたいからこそ喃語でも何とか言葉を出そうとします。そしてその中で自然と言葉も知っていきます。テキストや教材を使って座学的に言葉を覚えさせようとしても、感情はそこまで動かないので子どもの記憶には残りません。
 また、そもそも言葉とは人と会話をするための道具です。会話とは、さまざまな場面でその場に合った言葉を出しながら思いを伝え、相手の想いや意図を読み取る行為なので、言葉を覚える際には、その言葉を使う「場面」や「感情」「場面」をセットで覚えていく必要があります。例えば、家族で外出する前夜に胸がワクワクしている時は「悲しい」や「忙しい」ではなく「楽しみ!」と言う言葉が適切です。「楽しみ」という言葉を知っているだけでなく、場面に応じて「楽しみ」と言う言葉を脳内から引っ張って適切なタイミングで発せられるかが大切なのです。
 その為には、人とのコミュニケーションがやっぱり一番ですね。YouTubeやTikTokなどのソーシャルメディア、テレビを見ていても沢山の言葉は流れてきますが、これらは一方的な情報に過ぎないので、コミュニケーションにはなり得ません。語彙数は増えたとしても、その言葉の意味や使うべき場面までを理解し、学ぶ事は出来ないのです。これは、どんなに良質といわれている教育番組や教材であっても一緒です。
 あくまでも、言葉は会話によって獲得していくべきものだと私は思います。まずは、親子でじっくり、ゆっくりコミュニケーションを取る時間を大切にしてみて下さい。子どもを観察していると、日々の何気ない日常の中でもたくさん心は動いています。そんな時には、必ず言葉を発して何かを伝えてくれるはずです。乳児でも目で合図を送ってきたり、喃語で話してくれたりします。そういった場面を見逃さずに、そこからやり取りを楽しんでいけば、互いに意思を伝え合う“本当のコミュニケーション能力”が育まれていくはずです。
 

  園長 後藤大周