昨今、教育、保育現場で体験活動の重要性が注目されています。家庭や地域環境による「体験格差」と言う言葉も最近話題になっているようですが、こども家庭庁でも学校、園、家庭、地域それぞれの場における体験活動を推進しています。
「子どもに体験活動をさせる」と聞くと、大人が何か特別なことをしてあげなければと考えてしまうかもしれませんが、そんなことはありません。習い事をしたり、異国の人と接する機会を作ったり、いろんな場所にお出かけしたり・・・それはそれで素晴らしく意義あることなのですが、子どもたちが大人になるまでにしておくべき体験は、もっと身近な生活の中にもたくさんあります。例えば、周りの大人同士の関わりを見てコミュニケーションのバリエーションを増やしたり、遊びや生活をしながら自分の体の使い方を覚えたり、空から降ってくる雨や雪、季節によって変わる自然の景色を見ながら自然と人との生活の関わりを知ったり・・・大人が何か特別なことをしてあげなくても、子どもたちは毎日様々なことを体験しています。朝おきてから寝るまでの間に見ること、聞くこと、行うこと、子どもたちにとっては全てが体験です。大事にしてほしいのは、とにかく子どもが自分で何かを感じること、おもしろがること、大人の自己満足ではなく自分の体と心で味わう「体験」です。子ども時代の体験が感性を育て、その積み重ねが経験となってその人を作ると私は思います。
日々の生活の中で起きていることを見逃さずに、子ども自身が興味を持って自分の心と体で感じ、自分の頭で考える、それを親子で話しながら日々共有出来たら、子どもにとっての毎日はとても楽しいものになると思います。
そして何よりも、周りの人たちに優しく、大切に扱われたという経験を子どもたちには一番させてあげたいです。テーマパークに行った回数でも、習い事の数でもなく、そんな日々に囲まれていることこそが、子どもにとっては幸せなのだと思います。
園長 後藤大周