園長のひとりごと#47 桜

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 富士市内に、とても綺麗な桜並木があります。満開の季節になると、それはそれは素敵な道になって、ただ通るだけで、まるで自分が祝福されているような、そんな気持ちになります。普段はあまり通らない道ですが、桜の時期になると、毎年何かしら用事をつくってでも通りたくなります。今年も、卒園式が近づいた三月中旬、「そろそろ咲いているかな」と楽しみに向かいましたが、その時はまだ、枝に固いつぼみがついているだけでした。「あれ、まだ咲いていなかったかな?今年は遅いのかな?」と思いながらその日は通り過ぎましたが、後日ふと同じ道を通ると、景色は一変していました。ついこの前まで咲く様子も無かったつぼみが、一面に咲き誇っていたのです。
 ふいに訪れる美しい光景は、人の心を震わせます。今か今かと待っていた開花の瞬間は、ある日突然やってくるものなのだと感じました。子どもの成長も、どこか似ています。いつかな、まだかなと楽しみにしながら、ときには不安になりながらも、私たちは待つことしかできません。しかし、その瞬間は不意に訪れ、そして何よりも嬉しいものです。私自身、日々たくさんの子どもたちの“開花の瞬間”に心を動かされてきました。
 四月中旬の大雨で、桜はすっかり花びらを落とし、今では緑の葉が目立つようになりましたが「春は嵐が連れてくる」とも言います。子どももまた、大きく成長する前には、気持ちが不安定になったり、行動が荒れたりすることがあります。それは、春の訪れの前にやってくる嵐のようなものなのかもしれません。そんな時こそ、ぐっと堪えながら、その理由に目を向けてみる。そうすることで、思い通りにいかない子育ての瞬間にも、少し希望を見出すことができるのではないでしょうか。物事は、捉え方次第で見え方が変わります。私は、「桜は散るのではなく、舞っているのだ」と思っています。
 今月は桜と子どもを重ねて書いてみましたが、その儚さと美しさは、乳幼児期の子どもたちの姿とどこか重なります。開花の瞬間は本当に一瞬です。忙しい日々の中でも、その瞬間を見逃さず、しっかりと心に留めていきたいものですね。
 今日も、テレビをつければ悲しいニュースが流れています。世界では今も厳しい状況が続いています。戦火の中にも、私たちと同じように子どもを育てている人たちが沢山いるはずです。そんな中で、子どもの成長を喜ぶ余裕すら持てない状況もあるのかもしれません。それでももし、そんな中でも、「こんなことができた」「こんな言葉をかけてくれた」といった子どもの小さな成長に、ふと心が和らぐ瞬間があるとしたら、それは人として救われますし、世界にも光が見えます。
 桜の開花がニュースになる国って、とても豊かで素敵なことだと思います。この環境に感謝しながら、子どもの成長に気づき、喜び合える大人がそばにいる、そんな園でありたいと思います。

  園長 後藤大周